今月のウクライナ-142

ウクライナ戦争(もうめんどくさいからこう呼びます)で動きがあります。
ウクライナ軍のこれまでの地道な努力の甲斐あって、
東部、南部共に拠点を確保しつつあるだけでなく、
ロシア軍に大きな出血を強いているようです。
パルチザンやサボタージュ活動も活発みたいですし、
黒海艦隊への打撃も報告されてます。

今は無きプリタコ氏の盟友であったチェチェンのヒゲの大将、
カディロフが突然死したとの未確認情報も出てきましたし、
アルメニアとアゼルバイジャンが戦闘を再開したとの報道もあります。
カディロフ、太りすぎで心臓発作を起こしたのか確かなことは分かりませんが、
力ずくでチェチェン共和国を押さえていた人物がいなくなれば、
またぞろチェチェンはロシアに反旗を翻す形になるやもしれず、
いずれにせよ、
コーカサスに対するロシアの抑えが緩んでいるのは間違いのない所です。

このような情勢を反映してか、
中露朝の動きもここにきてにわかに活発化してきました。
キムくんとプー氏の会談は皆さまご存知の通りですし、
キンペー氏とプーチンが直に会談するハナシも出てまいりました。

で、このような状況を反映してか、
各国要人の穏やかならざる発言がここにきて相次いでいます。
フィンランド大統領はロシアによる核使用の可能性が高いと発言し、
アメリカのペンス前副大統領はウクライナ支援に絡んで
中国の台湾併合への危険性に言及しました。

以前に述べたように、
ロシアが戦術核を使えば NATO は間違いなく参戦するだけでなく、
NATO は戦術核を用いずしてロシアを殲滅すること可能、と思います。
NATO に対してロシアが戦術核を使用すれば、
西側は ICBM などの大型核の使用を躊躇しない、と思います。
少なくともアメリカは、ためらうことなくボタンを押すでしょう。
西側の大型核がロシア本土に到達する前に
プーチンはこれに対抗してボタンを押すでしょうから、
両者共倒れ、となります。
現行の物凄い威力の多弾頭大型核兵器に対する迎撃ミサイルの効果は
気休め程度だと考えた方が良いです。
で、このような状況はお互いすっごく嫌なので、
ロシアは NATO に対しては核を使用することはない、と思います。

で、この場合にロシアが勝てる唯一の方策が、
中国の台湾進攻と北朝鮮の南進をウクライナ戦争に同調させることです。

これを中国側から見れば、
ウクライナ戦争が終結し、欧州に平和が戻ったならば、
中国一国の武力による台湾併合の可能性はゼロです。
北朝鮮も、南進して勝てる見込みはゼロです。

ということは、習近平が本気のホンコに
「自分の目の黒いうちに台湾併合を達成するのだ!」と望んでいるならば、
アメリカ大統領が、欧州の地に、
自国の軍隊の多数を配備せざるを得ない状況を作らなくてはなりませぬ!

センセだったらそうします WWWWWW。
で、北による南進は駄目押し、ということです。

以前に述べたように、このような状況が現出すれば、西側はお手上げです。
米国が取るべき唯一の手段は、
ICBM をロシアではなく中国と北朝鮮に向けて発射する、と脅すことです。
脅しても言うことを聞かなければ、打つでしょう。
でも、この場合、ロシアに向けては撃たない。
一応ホットラインでその旨、プーチンに伝える可能性もあるかも・・・。

中露朝の関係が、単に武器弾薬の調達のレベルで留まるならば結構ですが、
いや、もちろんこれもよろしくはありませんが、
仮にそれ以上の話をコソコソしているとするならば、ヤバイです!
北西大西洋上でのチャーチルとルーズベルトの会談を彷彿とさせます。

しかしながら、
中露朝、三者でコソコソお話していても今一つ緊迫感に欠けるのは、
キンペー氏はそこまで本気で台湾併合を考えていないのか、
考えているとしても、武力併合よりもより穏やかな、
あるいは言葉を変えれば、
より「陰険な」方法で乗っ取ってしまうやりかたを
模索しているのかもしれません。
何しろ「孫氏の兵法」の国ですので・・・。
台湾独立に関しては外省人と本省人とで温度差がありますから、
飴と鞭を使い分けて時間をかけて釣りあげるのが得策だと思います。

いや、キンペーにとっては、ということですよ!

北のキムくんに至っては、自分の王朝が安泰でありさえすれば OK 牧場!
と考えているのが見え見えですので、
これも本気になって南進する可能性は低いかと・・・。

それにしても、
世襲による共産主義が可能であるとは
昭和世代の誰しもが夢想しえなかった状況ではあろうことよ・・・。

いずれにしましても、このように考えれば、
中露朝の三者が鳩首揃えてモゴモゴなにやら悪事を企んでいるように見えても、
あまり心配することはないのかも知れません。

もちろんこれは、
これら三人以外の誰にも本当の所は分からないことではありますが・・・。



今月のウクライナ-141

今月のウクライナ-49」と「50」で登場する大月氏のクシャナ朝ですが、
これの成立によって東方を断たれたパルティアは西方拡大策をとり、
折しも勢力を増しつつあったローマとアルメニア王国を巡ってぶつかります。
紀元前後のころです。
イエス・キリストとか、ユダヤ戦争とか、大体そのころ。
そのころの中東~アナトリアは、ローマ vs パルティアの時代です。

しかしながら、
パルティアはローマとの度重なる争いによって疲弊してしまい、
ペルシス地方(すなわちペルシャ)の反乱軍によって滅ぼされます。
反乱軍の首領がアルダシール 1 世で、ササン朝の祖となります。
西暦 224 年のことです。

パルティアとローマ.jpgローマの捕虜となったパルティア人  ウイキより
右がパルティアの兵士、左がローマの兵士。
パルティア兵はガウンとズボンの出で立ちで、
やはり遊牧民的なイメージが付きまとう。
あごひげもさもさ。
ギリシャやローマ人の場合、あごひげ姿は少ない。
ここらへんも両者のイメージが分かれるところ。
セプティミウス・セウェルスという所の凱旋門に掘られたレリーフです。


パルティア貴族の銅像.jpgイラン国立博物館の、パルティア貴族の銅像  ウイキより
パルティア貴族は「騎士」と呼ばれる階級を構成していたそうです。


パルティアの騎士.jpgパルティアの軽騎兵の像  ウイキより
パルティア貴族=騎士は、槍=ランスを備えた重装騎兵でしたが、
これを補うのが弓を装備した軽騎兵。
パルティアンショットと呼ばれる
ヒットエンドラン攻撃が得意だったそうです。


宗教的にはアーリア的多神教で、
ゾロアスター教はその中の一つとして信仰されていたようです。
ゾロアスター教がゾロアスター教として体裁が整うのはササン朝時代ですので、
この当時のゾロアスター教は他の宗教とも色々と習合し、
混沌としたものだったのかな?
とも考えます。
古代イラン・インド系は同根なので、
イランの神々とヴェーダの神々とが比定されることも多く、
例のアフラ・マズダーは阿修羅神のことですし、
前回登場したミトラ(ミスラ)神はヴェーダに登場する太陽神のことで、
牡牛(おうし)を屠り、酒を司り、盟約と信義の神として信仰されました。
パルティアは当初、ヘレニズム文化に大きな影響を受けた国でしたので、
これらのアーリア人の神々のいくつかはギリシャの神々と同一視されて
信仰の対象となっていったようです。いわゆる「神仏習合」です。
その中の一つがミトラ神で、
上述の太陽に関する神ということから直ぐにわかるように、
これはギリシャのアポロンの神と同一視されて崇められました。

このミトラ神の宗教はローマにも入り、
キリスト教が国教となるまでは、
ローマ市民の間で密教的に信仰されていたとのことです。

ミトラス神.jpg大英博物館のミトラス神像  ウイキより
牡牛を屠っている場面ですが、
なんでこういうことが信仰の対象となるのか、
現代人としては不思議な気がします。



今月のウクライナ-140

さて、「今月のウクライナ-33」でお話したマリアンヌですが、
一応、歴史学的にはこの地域に初めて登場したイラン系の連中です。
北方から来た彼らは、一派は北インドに、
他の一派はイラン高原から中東に向けて拡散して行きました。

古代中東地域の民族構成ですが、
シュメール人やミタンニ王国を作ったフルリ人など、
民族系統が不明な連中も多くおりますが、
基本、アフロ・アジア語族に属するセム系民族が優越した地域です。
で、シュメールやアッカドによって打ち立てられたメソポタミア文明ですが、
その後は長らくこの地域一帯の「文化的基本骨格」となりました。

ここら辺の事情は、
殷周時代の文化がその後の中国文化の骨格を形作っていったのと同じです。

で、イラン人=アーリア人は昔は遊牧民であったはずなので
当初はスキタイやサカ族などと同じような風俗であったのでしょうけど、
北インドに侵入していった連中は
ドラヴィダ系や、あるいはもっと古い土着の連中の影響を受けて
遊牧民的文化が希釈され、
最終的には現在のインド(名前が変わった、あるいは変わるようです)
に見られるような、独特の様式の文化を生み出していった一方で、
イラン高原から中東に進出して行った連中は
その地で偉大なるメソポタミア文明に出会い、その影響をもろに受けて
次第に遊牧民的特徴を失っていった、と個人的に考えています。

で、「今月のウクライナ-36」でお話したメディア王国を経て
今月のウクライナ-39」、「42」でお話したアケメネス朝ペルシャに至り、
同じイラン系ではあっても「ペルシャ」の名を冠する国家がここで誕生します。

メディアにせよアケメネス朝にせよ、
スキタイなど、北からの遊牧民の攻撃には大いに悩んでいたようですが、
元々の自分たちがそうであったわけで、攻守所を変えただけのことでしょうね。
歴史的には良くある話です。

で、「今月のウクライナ-136」で書いたように、
ペルシャ人は現在のイランのペルシャ湾沿岸に住んでいた連中で、
アケメネス朝の時に初めてイラン高原の覇権を握り、
ギリシャとは繰り返し戦い、
その後はイラン系国家としては最大の版図を得ることとなります。
首都はペルセポリス。ペルシャの都市、という意味のギリシャ語です。

前々回にキュロス二世のレリーフ画像を載せましたが、
ペルセポリスのレリーフ像を引き続き載せます。

大王の親衛隊.jpg大王の親衛隊  ウイキより
これを見ても明らかなように、メソポタミア文化の影響が明らかに大きいです。


で、アケメネス朝とギリシャとの戦いでは
マラトンの戦いサラミスの海戦ペロポネソス戦争などなど、
ギリシャに代表される西方文明とペルシャ率いる中東文明の衝突、
みたいな感がありますが、
アレキサンダー大王の登場によりペルシャは滅ぼされ、
中東から北インドにかけて、この地はヘレニズム文化に覆われてしまいます。

マラトンの戦い.jpgマラトンの戦いの想像図  ウイキより
ファランクス、重装歩兵による密集陣形同士の対決でしょうか?
上図、右手がペルシャ軍でしょうが、個人的には違和感がある。
というのは、ペルシャ人は元祖アーリア人で北方系の連中だわ。
図のペルシャ兵士はどうみてもアフロ・アジア系にしか見えない。
バビロニアの傭兵かな?
でも服装や装備など、一応レリーフの兵士を模して描かれているようだ。


大王の死後も、この地はセレウコス朝によってギリシャ化が進みますが、
今月のウクライナ-42」でお話したアルサケス朝パルティアと、
ギリシャのさらに西に勃興したローマ帝国によって
セレウコス朝も滅びてしまいます。

で、このアルサケス朝パルティアですが、
パルティアという言葉とペルシャという言葉には関連はありません。
パルティアはパルニ族という部族によって打ち立てられた国ですが、
パルニ族はペルシャ人と同じくイラン系です。
同じイラン系ですが、ペルシャ人の出自がペルシャ湾岸であったのに対し、
パルニ族はイラン高原北東部、カスピ海東岸に居た遊牧系の連中で、
むしろスキタイあたりに近い連中であったと考えられてます。

セレウコス朝を倒して東西貿易の要であるこの地域の覇権を握った彼らは
シルクロードを通して漢王朝と貿易も行っていたようで、
司馬遷の史記に出てくる安息というのがパルティアのことです。
で、化学系の方々にはおなじみの物質に安息香酸というのがありますが、
これは安息香の木から得られた良い香りのする樹脂の成分で、
抗菌・静菌作用があるため、食品添加物などに使用されます。
で、パルティアで用いられていたこの樹脂が
シルクロードを通して中国にもたらされたのでこの名が付いた、
という説があります。結構ありがちかな?と思いますけど・・・。

で、パルティアの文化ですが、
アケメネス朝やササン朝のようなレリーフがあまり残っていないので
感覚的によく分からないのですが、
たぶん同じイラン系とは言ってもペルシャ人とは異なって、
より遊牧系のカンジが強いのかな?と思ってます。
また、当初、周りをギリシャ系の国々に囲まれていたわけですから、
ヘレニズムの文化に大きく影響を受けていたのは確かです。
パルティア王の銀貨がウイキに載ってますので、これを上げます。

ミトラダテス2世.jpgパルティアの王、ミトラダテス 2 世の銀貨  ウイキより
ギリシャ文字が刻まれてます。
印象もギリシャ風ですね!
名前からしてミトラ教を信仰していた?

ミトラ教に関しては、そのうちお話します。






今月のウクライナ-139

まだ秋ではない・・・。真夏だっ!
でも、ここ坂城では、
さすがに朝晩は秋らしさが少しは感じられるようになってきた。

北アフリカのリビアでは大洪水で 1 万人以上の死者が出た。
あんなにも乾燥した国で・・・。
デルナと言う町の 1/4 が跡形もなく流されてしまったようだ。
「家からデルナ!」と言われても、家ごと持っていかれた・・・。
つい先日は隣国のモロッコで大地震があったばかりだ。
洪水は地中海でハリケーンが発生したためだというが、
地中海でハリケーンというのは初めて聞いた。
ギリシャを始めとして、
地中海沿岸地域の旱魃~山火事はもはや夏の風物詩だ。
ただでさえ高い地中海の塩分濃度はさらに高まる?
地中海は、太古の昔には干上がっていた時期もあったそうだ。
今年はカナダでも大規模な森林火災が生じた。
ドイツ一国分の森林が焼けてしまったそうだ。
中国の洪水も凄かったし、日本の千葉も水害に見舞われた。
センセが昔よくバイクで通っていた養老渓谷も水浸し!
あの高~い橋桁を持つ赤い橋の袂まで川の水が達したという
TV のニュース映像を見て、びっくり仰天した!

養老渓谷 観音橋.jpg養老渓谷。いつもの観音橋  
市原観光ナビゲーション様より https://ichihara-kankou.or.jp/kanko/meisyo/youroukeikoku/

観音橋 水害.jpg水がここまで来た!  切り取ったニュースの静止画です。


Threshold、閾値(いきち)に到達したのだろうか?
それともとっくに過ぎたのか?

人類を含む生物全体が絶滅する、ということにはならないだろうが、
食糧危機、難民問題、地域紛争が今以上に頻発するのは間違いない。
きれいごとは払拭(ふっしょく)され、
生々しい生存競争の日々が現出することであろう。
まだまだ先の事だと思っていたが、どうやらそうでもなさそうだ。

最後の審判の日に現れるのは
ヤハウェかアッラーかアフラ・マズダーか?

それとも閻魔大王様でしょうかね???


今月のウクライナ-138

G20 にプーチンが出席しないのは、分かる。
キンペー氏が出ないのが、ちょいと引っ掛かる。
北のキムくんがウラジオでプーチンとお話する予定、だという。
ロシアと中国と北朝鮮、ナンカ、最近やけに仲が良いような気がする。

ウクライナ軍の南部への突出が成功したとすると、
ロシアの戦術核への誘惑がいや増す。
仮に用いた場合、NATO は自動的に宣戦布告するであろうが、
NATO 自身が戦術核を用いるかどうかは不透明だ。
いずれにせよ、アメリカは欧州に軍を送る。
これに同調して中国による台湾進攻と北朝鮮の南進が生じれば、
さすがのアメリカも両面作戦、いや三方面作戦は不可能だ。
もちろん日本は指をくわえてみているだけ。
NATO に対比できるような組織は東アジアには存在しない。
西側民主国家は壊滅だ。

これに対抗するにはあれしかないが、するだろうか?

幸いなことに、中国も北も、未だ、可視的な兆候を示してはいない。
示してはいないが、
上記のシナリオは、あながち絵空事とは思えない・・・。


さて、ゾロアスター教です。
古代インド・イラン系の連中によって信仰されていた多神教ですが、
これを「アフラ・マズダー率いる善神を信仰せよ!」
と説いたのが怪傑ゾロ氏です。
で、このアフラ・マズダーは、実は阿修羅=アシュラと同一の神です!
ジョージ秋山のマンガでも有名です。知ってる?
ここからも、古代インドと古代イランとは非常に近い関係にあった、
というのが分かります。

で、このような多神教を整理して一神教的な教義を唱えたゾロ氏ですが、
メディア王国の時代には大きく変質を遂げてしまいます。
このようなシルバニア化したゾロアスター教ですが、
紀元前 550 年にメディア王国を滅ぼした
キュロス二世のアケメネス朝ペルシャの時代には
勢力もそれなりに大きくなり、
少なくともアケメネスの王家の人々は、これを熱心に信仰していたようです。
しかしながら、
この王朝はバビロンに囚われていたユダヤ人を解放した人々ですので
宗教的には寛容政策をとり、
版図内には様々な宗教を信仰する連中がおりました。

キュロス二世.jpgキュロス二世の像  ウイキより
レリーフから模写したものかな?
ふむ、ペルシャの王様は大体がこんなイメージ。
イスラム前のペルシャ文化は
古代メソポタミアの文化を強く踏襲しているのだな、と感じます。

今月のウクライナ-137

で、苦労の放浪生活を続けながらも布教に努めた怪傑ゾロ氏ですが、
42 歳の時に、とある小国の王様の後ろ盾を得ることに成功!
ここにゾロアスター教、すなわち拝火教、あるいは祆教(けんきょう)
と呼ばれる宗教が誕生しました!おめでとうございます!

ゾロアスターの教えは、簡単に述べると、
多神教の神々に牛などを屠って生贄として捧げていた当時のアーリア人に対し、
「この世は善と悪の二つの神による争いである。
最高神であるアフラ・マズダー率いる善神を敬い、善行を行えば、
最後の審判時に天国=パラダイスに行ける」
というものです。
善悪二元論の背後に最高神が控えていることから、
「一神教的二元論」などとも呼ばれます。
で、このパターン、後でお話する予定のマホメット氏とそっくりです!

で、これだけ見れば、イスラムの教えなどにさも似たり、なのですが、
ゾロアスターが死ぬと、
周りの連中がゾロ氏の単純明快な教えにごちゃごちゃと修飾を施し始める。
これまた宗教のいつものパターンである、「シルバニア化」です。
たぶん、
「教祖の教えは無知蒙昧な大衆には分からない、
大衆の耳目を驚かすような、
何かもっとおどろおどろしい形にしなくてはならない」
などとと考えるのでしょうね。
一度出来た教団は、自らを養うだけでなく、
勢力を拡大していかなくてはならない、
そして、これを為政者が人民支配に利用するという、いつものパターンです。

で、これに対して原理主義的な連中が反動する、というのも、
毎度おなじみの歴史的パターンです。

で、「今月のウクライナ-36」に登場したイラン系の人々による初の帝国、
メディア王国(紀元前 715 年頃)ですが、
この王国にはマゴスとよばれる神官たちがおりました。
以下、ウイキより引用します。

「彼らは拝火儀礼、鳥葬、清浄儀礼、
悪なる生物(カエル・サソリ・ヘビなど)の殺害、
最近親婚、牛の犠牲獣祭といったメディア人の宗教行為を担っていたが、
拝火儀礼・犠牲獣祭以外は
原イラン多神教に見られない独自の風習であるとされる。」
「東方からメディアに来たと思われるゾロアスター教団は
マゴス神官団の権勢に圧倒され、
爬虫類殺害や最近親婚を取り入れ、
葬式は土葬から鳥葬、犠牲獣祭も羊から牛に転換したとみられている。」

とのことです。

鳥葬と言えばチベット仏教が思い起こされますが、
ゾロアスター教もそうだとは知らなんだ・・・。
それよりも何よりも、最近親婚とは何かと言えば、
「最近、うちの親が再婚してねえ・・・」
ではなくて、
近親結婚のことです!
それも、近ければ近いほど宗教的にはよろしい、との教えです!!
なんちゅうこっちゃ!!!
これまた初めて知った・・・。

で、ハプスブルク家の歴史を紐解くまでもなく、
近親婚の繰り返しが遺伝子プールの劣化を招くことは
現代では分かり切っていることですが、
ではこの時代は分かっていなかったのか?
当然「遺伝子」の概念などはなかった時代ですが、
そもそも論として、
ほとんどの部族~民族において近親婚はタブー視されてますし、
何よりもまず、多くの動物で自然に忌避されてます。
動物たち、遺伝や DNA の知識は皆無です。
すなわち、動物としては「本能的」に分かっていた、
ヒトの場合は「経験的」に理解され、語り継がれ、タブーとなった、
ということでしょうか?
動物の場合も、本能というよりも、なにか、他の要因があるような気がします。
子供が大きくなると自然に「目ざわり」となり、巣から追い出す、
というカンジ・・・。
大きくなった子供に対して親はイライラするように働くホルモンが分泌され、
結果として子供の巣離れを促す形となり、
これが近親婚を間接的に避けるメカニズムとして働く、
という仮説はどうでしょうか?

もっとはっきり言えば、ヒトでも分泌されている可能性があります WWW。
あるいは逆に、年頃になった娘が
「同じ洗濯機でお父さんの衣服と一緒に洗って欲しくな~~~い!」
とか言い出すのも同列のハナシであるかも・・・。

また逆に、子供の成長に伴って親側のオキシトシンの分泌が減少する結果、
排除行動につながる、という形なのかも知れません。

引きこもり問題とも、本質的に、関連します。

ヒトでも動物でも、ある特殊な状況では近親婚が発生しますし、
単発的~短期的な形では不都合は生じない場合も多いかとは思います。
また、実験動物学の分野では、意図的に近親婚を繰り返し、
「近交系」と呼ばれる、
「同じ遺伝子セット=ゲノム」を有する一群を作り出すことも行われます。
しかしながら、
宗教の教義としてこれをホモサピエンスに対して奨励するというのは
「理解の埒(らち)の外にある」と言わざるを得ません。

「同意があればどのような形の愛でも OK 牧場!」
とか主張する LGBT + αβγ 教の信徒の方々ですが、
この問題に関してはどのようなご意見をお持ちでしょうかね?
ええ、もちろん、避妊具はつけますよ WWWWWWWW!
近親婚だけでなく、もっとすごいのも色々ありますけどね WWWWWWWWW!


沈黙の塔.jpgイランのヤズドにある「沈黙の塔」  ウイキより
ここで鳥葬が行われたそうです。

今月のウクライナ-136

ゾロアスターはヒトの名前です。
ザラスシュトラともツァラトゥストラとも呼ばれます。
ザラスシュトラ・スピターマ、と言うのが正式名称らしいです。
ニーチェの「ツァラトゥストラはかく語りき」で、かく語っているヒトです。
センセも昔に読みました。
退屈でした。

ニーチェに関しては、若いころ、
「人間的な、あまりに人間的な」と「善悪の彼岸」も読みましたが、
センセの場合は「善悪の彼岸」が最も面白かった。
面白いだけでなく、影響も受けた。
生物学関係の研究者になったのも、一部、その影響です。
ニーチェ、カント、フロイド、ヘルマン・ヘッセ、ヴィトゲンシュタイン、
マックス・ウエーバー、シュペングラー、メルローポンティ、フッサール、
チョムスキー、レヴィ・ストロース、シュンペーター、ガルブレイズ、
リースマン、エーリッヒ・フロム、ジャック・モノー、ドーキンス、
その他その他その他その他その他、たくさん読んできた。
決定的だったのが、コンラート・ローレンツ
彼の「ソロモンの指輪」を新宿の紀伊国屋で立ち読みして、
この道に入ってきた。
ソロモンの指輪は、初めから最後まで、立ち読みで読みつくした。
紀伊国屋に何度も通って・・・。
最終日、気が付くと、「蛍の光」が鳴っていた・・・。

でも最後にはちゃんと一冊買いましたよ!田辺さん!

で、「ペルシャ」という言葉ですが、
これは現在のイランの中南部、ファールス地方に由来します。
昔はパールサと呼ばれたそうで、これがペルシャとなりました。

で、ペルシャ人というのはこの地方に住んでいた連中で、
言うところの「アーリア人」に属します。
今月のウクライナ-33」でも述べたように、
紀元前 1600 年ころ、印欧語族の中でも
原インド・イラン語を話す連中が中東地域に侵入してきました。
当時は両者ほぼ同じ言語だったらしいです。
一方は北インドへ、他方はイラン高原~中東地域へ、というカンジです。
当時メソポタミア上流部にあったミタンニ王国は
フルリ人という所属不明の連中が作った国ですが、
その国で戦士として雇われた連中が原インド・イラン語を話す人々。
いわゆる「マリアンヌ」です。
戦士から支配階級に上り詰めてしまいます。
ペルシャ人の祖先が彼らの直接の子孫であるかどうかは分かりませんが、
いずれにせよ、アーリア系の人々です。

で、これらの原始アーリヤ人は多神教徒でした。
元々同族ですから、原始インド宗教との類似も指摘されています。
で、数ある宗教的有名人の中でもゾロアスター氏は最も古いヒトです。
ゴータマさんよりも昔に生まれました。
色々説はあるようですが、
紀元前 1000 年くらいまで遡る研究者もいるようです。
で、どうやらペルシャ人ではないらしい・・・。
ペルシャ人ではないが、イラン系であるのは間違いない。
ハエーチャスパ族と呼ばれる小部族出身のオトコで、
現在のトルクメニスタン~アフガニスタン辺りで生まれ育ったらしいです。

で、彼の家系はハエーチャスパ族の神官一族だったらしく、
当初は多神教の部族信仰に携わっていたようですが、
ある時ビビビ~ンと啓示を受ける!おなじみの展開です!
で、数多くの神々の中でもアフラ・マズダーと呼ばれる神こそを拝め!
と言い出す。
で、各地で布教しまくるのですが、当初は全く相手にされなかったとのこと。
みんな同じパターンですね!

ゾロアスター.jpgゾロアスター氏の肖像画  ウイキより
3 世紀に描かれた想像画です。
イスラム以前のこの地域の人々のイメージを表すものとして貴重かと・・・。

今月のウクライナ-135

南方戦線で動きが見られます。
地道な戦いを時間をかけてじっくりと行って来たウクライナ軍ですが、
ここにきてようやく第一防御線を突破した可能性が出てきました!
但し、行く手にはさらなるスロビキン・ラインが待ち構えてます。
加えて、センセが「今月のウクライナ-91」で指摘したように、
戦車を主体とするウクライナ精鋭部隊が集結しているために
ロシア議会では「戦術核を使用する絶好のチャンスだ!」
との妄言を吐き散らかす議員が登場しました!

ま、
戦術核を使用したらロシアそのものが無くなる可能性の方が高いわけですが、
じゃあなんであれほど大量の戦術核兵器を作って来たのか、
あれは単なる飾り物なのか?と、
プーチンは国内のタカ派から突き上げられる可能性もあるわけです。
また、本日どうやらベラルーシに戦術核の弾頭が搬入されたとのことですが、
ルカシェンコ氏、喜んでいるのか、あるいは
「こんなはずじゃなかった・・・」と悔やんでいるのか、さて・・・。


で、マホメットの前に「ペルシャ」に関して少しお話したいと思います。
というのは、センセの場合、
「ペルシャという言葉は有名で、大国として歴史にも何度も登場するし、
現在のイランが昔のペルシャであるのは重々承知してはいるけど、
何というか、どうにもイメージが湧かないんだよなあ~」
というカンジなんです。
というのも、その後のアラブ、あるいはイスラム教と言うべきか、
のイメージがどうしても全面に出て頭の中を覆ってしまうので、
イスラムに影響される前のペルシャ文化というのがピンとこない・・・。
例えばペルシャと言えば絨毯が有名ですが、
ペルシャ絨毯をイメージすると「空飛ぶ絨毯」が頭に浮かんでしまい、
どうしてもアラビアンナイト、千夜一夜物語のイメージとなってしまいます。

ハクション大魔王とアクビ娘、というカンジです・・・。

なので、自分なりのペルシャのイメージを作るべく、少し調べてみました。
ウイキですが・・・。

で、一つひらめいた!
ペルシャと言えばゾロアスター教!
ゾロアスター教をつっついてみれば
少しはペルシャのイメージが想像出来るのでは?

と言うわけで、ゾロアスター教です!

ゾロアスター教の守護霊フラワシ.jpgゾロアスター教の守護霊フラワシ  ウイキ英語版より


今月のウクライナ-134

いやいやいや驚きました。
プリタコ氏、暗殺されました。
まさに、「狡兎死して走狗烹らる」です。

今回の走狗は一度飼い主に吠えたわけですが・・・。

ネットでは、
「いつ暗殺されてもおかしくない」との意見が多数でしたが、
センセは、
「暗殺されずにもっと上手に利用されるのでは?」
と考えてました。
でも、やはり暗殺されてしまった・・・。

件のスロビキン上級大将もプリタコ氏と近い関係により
航空宇宙軍総司令から解任されたことから、
彼の将来もどうなることやら・・・不透明です。

で、プリタコに面と向かって罵倒されていた
ショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長はそのまま安泰の様子。

結局プーチンは、
「能無しではあっても 100% 忠実な番犬」の方を
「働き者だが、一度飼い主に吠え付いた有能な狩猟犬」よりも重要視した、
ということになります。
ここに典型的な「独裁の弱点」が現出した、ということです。
少なくとも歴史的観点から見れば、
ほぼほぼ必然的に陥る「独裁の陥穽」にプーチン王朝も陥った、
ということでしょう。

とっくに陥ってはいるのですが・・・。

本当に 21 世紀に起きていることなのか?
と誰しもが思われたかと思います。
中世史を目の当たりにしているかのようです。
方法が、「毒殺か、搭乗機の爆破か」の違いだけです。

折しもプーチン氏、
現在南アフリカで行われている BRICS の会合に、
逮捕を避けるために、
ネットを介して参加しているはずです。
BRICS のみならず、
お友達のいないロシアは、
中国同様に、
アフリカ諸国への働きかけに大いに力を注いでいます。
そのアフリカ、特にサヘル諸国などの紛争の多い国々において、
プリゴジン率いるワグネル部隊の存在感には非常に大きいものがあります。
ワグネルの強みは、
これらの国々への傭兵の提供との引き換えとしてもたらされる
鉱物資源などの「利権」から得られる収入にあります。
このように、ロシアの世界戦略ベクトルの最先端を担っていたはずの
ワグネルのトップをこのような形で粛清したとすれば、
このベクトルはどちらの方向に向かうのか、
不透明感いや増します。

そもそも論として、
プリゴジンが率いていたのは「傭兵」です。正規兵ではありません。
一般論として、兵士は、命と引き換えに何かに対して戦うわけです。
正規兵の場合は自らが所属する国家、あるいは共同体というべきか、
への忠誠心に基づいて戦うわけですが、傭兵の場合は、まずは「お金」、
次に自分たちの「ボス」への忠誠心が重要となります。
連中は、基本的には「社会からのはぐれ者」です。
そのはぐれ者のココロをくみ取って戦場に向かわせるのがボスの使命です。

ヤクザの大将と同じです。
しばしば方法は相当に手荒くはなりますが・・・。

従って、傭兵はプリゴジンに対して忠実なのであって
ロシア、あるいはプーチンに対して忠実なのではありません。

ステンカ・ラージンのようなモンです。

現在、モスクワのみならず、ロシア国内の軍需~民需に対して、
ドローンによる攻撃が相次いでいます。
その多くが、ロシア国内から発射されているようです。
すなわち、対プーチン派がロシア国内に少なからず居る、ということです。
この対プーチン派には親西側の連中も居りますし、極右的な連中も居ます。
どちらであるにせよ、対プーチンで一致しています。
ステンカ・ラージンの残党の、少なくとも一部は、
これらの対プーチン派に移行する可能性もゼロではありません。
また、プリゴジン、血気盛んなロシアの若い衆の間では人気がありました。
結局プーチンは、これらのエネルギーを有効に利用することができず、
ひたすら「恐怖」によって支配するという
中世史的な独裁統治法のみに頼って今後を戦っていくという選択肢を選んだ、
ということでしょうか。

混沌、いや増します・・・。

今月のウクライナ-133

古代イエメン~エチオピア~アラブについてお話しておりますが、
折しも、
エチオピア難民がイエメン経由でサウジアラビアに入ろうとしたところ、
サウジ側の国境警備隊によって銃撃を受け、
多くの死者が生じている、とのニュースが入ってきました!
ここ数年で犠牲者は数百名にのぼる、との情報もあります。
ロイターに動画があります。
動画を見れば明らかなように、岩がゴロゴロした山岳地帯です。
「アラビア」から連想されるような、広大な砂漠とは大きく異なる印象です。

サウジアラビアは「サウド家のアラビア」という意味で、
ご存知のように、サウド家出身の世襲の王様により統治されている国です。
一応「評議会」と言う名の議会みたいなものがありますが、
日本や西欧などの民主国家の議会とは程遠く、
単に国王を補佐するような機関らしいです。
基本、内政はシャリーアと呼ばれるイスラム法に則って行われますので、
やれムチ打ちの刑とか石打ちの刑とかが実際に執行されるようです。
数年前のカショギ氏暗殺事件などでも明らかなように、
とても 21 世紀の現在を生きている政体とは思えません。
それでも国民に不満があまりなさそうなのは、もちろん、
石油収入のバラマキによるものでしょう。
加えて地政学的な観点から、
「アメリカが大目に見ている」という点も指摘されるでしょう。

一般論かもしれませんが、
イスラムの教えを世界規模で広めたアラブ人ですが、
西のモロッコから東のイラクに至るまで、
本当の意味で政治的に安定している国家が見当たりません。
数年前の「アラブの春」では
これらの地域における民主化の広まりが期待されましたが、
シリアに見られるようにかえって不安定化してしまいました。
「アラブの春はチェニジアのみが成功した!」と言われてましたが、
現在、そのチェニジアすら不安定化しつつあるようです。

非アラブのイスラム国家である
イランやパキスタン、アフガニスタンなどは言わずもがなですが、
マレーシアやインドネシアなどの東南アジアのイスラム国家は
比較的安定しているように見えますので、
必ずしも「イスラム教」そのものに原因があるのではないのかも知れません。
厳格主義~原理主義と世俗主義の差でしょうかね?

現在サウジアラビアはイエメン紛争に介入中で、
しばしばイエメン爆撃が報道されます。
今回のエチオピア難民虐殺も、紛争介入と関係があるような気がします。
そもそもが、サウジアラビアによるイエメン介入の理由などは、
部外者にはサッパリ分かりまへんが・・・。


さて、古代イエメンに戻りますが、
ゴタゴタのヒムヤル国にササン朝ペルシャが介入し、
最終的にはこの地からアクスム国の影響を排除するだけでなく、
南アラビア沿岸一帯を自国領としてしまいます。
この時代、北アラビア地方にはいくつかのアラブの小国があり、
また、内陸部にはベドウィンの部族連合みたいな連中も居りました。
中東地域の覇を争って頻繁に干戈を交えるビザンチンとササン朝ですが、
ササン朝優勢となってくるとこれらのアラブの小国も飲み込まれ、
621 年にはローマからエジプトも奪取し、
ここにホスロー 2 世によるササン朝の最大版図が現出します。

このような時代背景を伴って、マホメットが登場してきます。

次回はササン朝ペルシャについて少しお話をした後で、
ゴータマさんともイエスさんとも大いに異なる
マホメットさんのお話をしてみたいと思います。

ササン朝ペルシャ.jpgホスロー 2 世時のササン朝ペルシャ最大版図  ウイキより
ペルシャと言えばササン朝、というカンジですね!
最近ではサーサーン朝と呼ぶのも多いです。
どっちでもいいですよ~♪